イントロダクション

日本中が《ドラ泣き》した
感動作が帰ってくる!!
これは『STAND BY ME ドラえもん』の、その後の物語。

2014年に公開され、日本中を感動の渦に巻き込んだ『STAND BY ME ドラえもん』。
「ドラえもん」初の3DCGアニメーションによる圧倒的な映像や、大人も泣ける感涙ストーリーが話題となり、興行収入83.8億円を突破する大ヒットを記録しました。

そして、あれから6年──
ドラえもん50周年記念イヤーである今年、ついにその続編が公開となります!

本作を手掛けるのは、前作に引き続き、監督:八木竜一×脚本・共同監督:山崎貴の名コンビ。原作の中でも名作として知られる「おばあちゃんのおもいで」をベースに、新たなオリジナルの要素を加えてストーリーを再構築。前作で描かれた「のび太の結婚前夜」の翌日である結婚式当日を舞台に、まだ誰も見たことがない、<のび太としずかの結婚式>を描きます。

あの日、あの時、ドラえもんがいてくれたら……。
過去・現在・未来をつなぐ新しい「ドラえもん」の物語。
『STAND BY ME ドラえもん 2』で、この冬、もう一度《ドラ泣き》しませんか?

ストーリー

22世紀から来たネコ型ロボット・ドラえもん。
ドラえもんとのび太が一緒にいるのが日常になった<現在>のある日、のび太は部屋でくまのぬいぐるみを見つける。それは幼稚園の頃に亡くなってしまったおばあちゃんが繕ってくれた、大切な思い出の品だった。

大好きだったおばあちゃんを思い出し、涙が止まらなくなったのび太は、タイムマシンでおばあちゃんに会いに行きたいと提案。反対するドラえもんだったが、直接会わずに様子を見たらすぐ帰ることを条件に、のび太が3歳だった<過去>へと出発する。

会いたい気持ちを抑え、陰からこっそりおばあちゃんのことを見ていたのび太。しかしひょんなことから、おばあちゃんに見つかってしまう!小学生になったのび太の姿を見て驚きつつも、あの頃と同じように優しく受け入れてくれるおばあちゃん。

「あんたのお嫁さんをひと目見たくなっちゃった」

そんなおばあちゃんの一言で、のび太とドラえもんは、今度は<未来>へと出発する。
ところが、結婚式当日──

のび太、逃げた。

結婚式場に、新郎である大人になったのび太の姿はない……。どうしてのび太はいなくなってしまったのか? 大好きなおばあちゃんの願いを叶えるため、そして、しずかとの未来を取り戻すため、<過去>、<現在>、そして<未来>を舞台に、ドラえもんとのび太の大冒険が始まる──

プロダクションノート

企画の始まり

八木竜一監督山崎貴監督
藤子・F・不二雄先生の大ファンを公言し、作品を長年愛読している八木竜一監督と、「藤子・F・不二雄先生の作品に多大な影響を受けている」という山崎貴監督。ともに(株)白組所属で、何度も共同で作品を生み出し、ともに藤子・F・不二雄先生をリスペクトする二人が監督を務めたドラえもん史上初の3DCGアニメーション映画『STAND BY ME ドラえもん』は、2014年に公開されると興行収入83.8億円の大ヒットを記録した。

もともと続編ありきのプロジェクトではなかったが、公開前から『2』の話は出ていたという。というのも、前作が完成した時点で、制作陣は作品にかなりの手ごたえを感じていたから。やがて興行的にも成功を収めたことで、続編製作の動きが加速することに。それは両監督にとってもちろん喜ばしいことだったが、1つ悩ましい問題が……。前作は「ドラえもん」の中でも名作と呼ばれるお話をつなぐ形で一本の長編としており、有名なエピソードはほとんど使ってしまっていた。「これはまずいと思いました」と前作に引き続き脚本を担当した山崎監督は当時の気持ちを明かす。だが、前回入れたくてどうしても難しかった話の1つに「おばあちゃんのおもいで」(てんとう虫コミックス4巻収録)があり、それを軸にストーリーを膨らませ展開していくことに決定する。しかし、誰もが納得する脚本づくりは難航。ボツになった脚本も何本かあった。「正直難産でした。あの物語を膨らませる方向を見極めるのに何度も集まりミーティングを繰り返し、四苦八苦していた時間がすごく長かった気がします」

方向性が見えてきたのは、今作のキャッチコピーの1つにもなっている「のび太、逃げた。」というアイデアがスタッフの一人から提案されたことがきっかけ。のび太とドラえもんは、“のび太のお嫁さんを一目見たい”というおばあちゃんの願いを叶えようとするが、結婚式直前に新郎である大人のび太が逃げてしまい、探しに行くことになる。その設定をもとに、改めて脚本を執筆していくこととなった。

◎ STAND BY ME ドラえもん

2014年8月8日公開。「ドラえもん」史上はじめての3DCGアニメーション映画。「のび太の結婚前夜」や「さようなら、ドラえもん」といった、原作の中でも名作と呼び声高いエピソードを厳選し、ひとつの物語として再構築した。興行収入83.8億円の大ヒットを記録し、第38回日本アカデミー賞において最優秀アニメーション作品賞に輝いた。

【あらすじ】
何をやらせても冴えない少年のび太の前に現れたのは、22世紀から来たのび太の孫の孫セワシと、ネコ型ロボット・ドラえもんだった。のび太の悲惨な未来を変えるため、セワシはドラえもんに<成し遂げプログラム>をセットして、のび太を幸せにしない限り、22世紀に帰れなくしてしまう。果たして、のび太は幸せになり、ドラえもんは22世紀に帰ることができるのか……?

脚本づくり

今回の脚本には「おばあちゃんのおもいで」に加え、2つのエピソードが組み込まれている。1つはてんとう虫コミックス2巻に収録されている「ぼくの生まれた日」。のび太がタイムマシンで自分の生まれた日を訪れ、名前の由来や両親の想いを知るお話である。『STAND BY ME ドラえもん』では、のび太としずかの恋愛が核になっていたが、今回は「おばあちゃんのおもいで」をベースに結婚式の話を描くため、「ラブストーリーではなく、家族の話がより大事になるので、『ぼくの生まれた日』が入れられると思ったんです」と山崎監督。

ちなみに、この「ぼくの生まれた日」は、八木監督が以前、藤子・F・不二雄公式ファンブック「Fライフ」のインタビューを受けた際、一番好きな話と答えているお話だった。さらに今回登場するひみつ道具、タマシイム・マシン(てんとう虫コミックス13巻に登場)も、八木監督が“一つだけほしいひみつ道具があるとしたら?”と質問されて挙げていたアイテム。「あのインタビューを読んで入れてくれたのかなとひそかに思っていた」と嬉しそうな八木監督に対し、山崎監督は「この2つは絶対入れなきゃと思って八木のために書きました……と言いたいところですが、全然知らなかったので、まったくの偶然です(笑)」。その八木監督のお気に入りアイテム、タマシイム・マシンは、本作では現在に帰れなくなったドラえもんとのび太を救う活躍を見せる。「タイムマシンで帰れないエピソードは一度やってみたかったんです。あらゆる手がないけど意外な手が残っていたというところでタマシイム・マシンを使いました」と山崎監督は言う。

今回使われているもう1つのエピソードは、「ドラえもんプラス」(てんとう虫コミックスに未収録の作品を集めた単行本)第5巻に収録されている「45年後……」。45年後の初老ののび太が、小学生ののび太と入れ替わり子供の姿になって、母の懐かしい手料理を食べたり、野球をしたり、子供時代の日常をもう一回楽しむノスタルジックなお話。知る人ぞ知る名作である。そのエピソードで登場するひみつ道具が入れかえロープなのだが、本作では結婚式直前の大人のび太と小学生ののび太が入れ替わることに。

大人のび太と小学生ののび太が一緒にいるこのエピソードのほかにも、本作では、小学生ののび太が二人同時にいたり、小学生ののび太と3歳ののび太が会ったりと、タイムマシンが現在・過去・未来を縦横無尽に行ったり来たりすることで、興味深いシーンがたくさん生まれている。「あれができるのが『ドラえもん』のいいところ」と山崎監督。シナリオ打ち合わせの際は、混乱気味のプロデューサー陣に何度も時系列を表にして説明したとか。「F先生の作品は近未来や近過去からやってきた人たちが一同に集まって大混乱したり、複雑な入れ子構造になっているものがいくつもあります。それがタイムトラベルものの面白さの1つですし、ぜひやりたかったんです」。このほか、前作の続きであり、原作漫画で描かれていないのび太としずかの結婚式当日を描くことも今回両監督がやりたかったこと。こうしてやりたかったことが詰まった脚本がついに完成する。

絵コンテ作業

脚本が完成したのが2018年夏。そこから半年ぐらいかけて絵コンテを書く作業が続いた。前作では八木監督がすべて手掛けていたが、今回はスケジュールの都合もあり、山崎監督も1/3程度を担当した。

絵コンテは脚本に沿って起こしていくが、この段階で足される要素もある。山崎監督のアイデアは脚本にすでに書かれているので、主にプラスするのは八木監督。たとえば、映画冒頭に登場するのび太の結婚前夜、ジャイアン、スネ夫、出木杉と飲んだ後の光景がそう。「ぼくの書いた脚本だとのび太の誕生日から始まるんですが、結婚前夜のシーンがあることがすごくよかったと思います。あのオープニングは切なくて好きですね」と山崎監督は言う。

のび太としずかちゃん、のび太とパパ、のび太とおばあちゃんなど、印象的な手をつなぐカットも絵コンテの段階で生まれたもの。「CGで、ちゃんと触ったということを表現するのはけっこう難しいんです」と八木監督。「でも、人と人のつながりを象徴するカットなので、どうしても入れたかったんです。指輪をはめるシーンもあるので、手のアップは大事に作りました」

今回登場するひみつ道具に関しては、「あれだけたくさんの道具があるから、そのシチュエーションに使えるものを探すと何かあるんです」と山崎監督が言うように、たずね人ステッキなどストーリーに必要なものとして脚本の段階で書かれているものもあれば、スモールライト、重力ペンキなど絵コンテの段階で八木監督が追加したものもある。「日常の中にちょっと不思議なものがあるのがドラえもんの面白さ。それを随所で体感してほしかった。重力ペンキは、普通に会話していても面白くないと思ったので、ひみつ道具を使って、部屋の中を面白い状態に。スモールライトはひみつ道具ベストテンがあれば、絶対入ってくるような人気道具だと思うんですが、前回登場させられなかったので、今回は出したかったんです」

前回より登場シーンが多いタイムマシン。のび太とドラえもんが未来に行くときはトンネルがくねくねとしているが、過去に行くときはまっすぐという違いが。これは、未来はどうなっているかわからないので先が見えないが、確定している過去には比較的簡単に行ける、ということを表現している。

キャラクター制作

前作では、漫画の登場人物たちを原作のイメージを損なわずに3DCG化するため、藤子プロのスタッフも参加したうえで1年以上かけてキャラクター開発が行われた。たとえばドラえもんは、原作通り白目が開いたまま黒目が閉じたり笑ったりすることにし、表面は、“未来ゴム”という材質で覆われ、口の端のでっぱりや鈴への映り込みなども細かく作られている。のび太はもっとも表情豊かなキャラクターで、漫画と違い、眼鏡と目を分離させているのがポイント。そしてとにかく全カットかわいくしたかったというしずかは、黒目と白目のバランスにこだわり、ライティングにも気を配っている。どのキャラクターも髪型は重要で、のび太の前髪はミリ単位で調整、ジャイアンはギザギザの前髪、スネ夫はリーゼントっぽい髪型と、漫画の印象を維持しながら、リアルさも追求した。そうやってこだわり抜いて作った3DCGキャラクターは、今回も基本的にそのまま引き継いでいるが、実は変化している点も。「微妙な違いですが、頭髪が以前よりさらさらとしています」と八木監督。

今回初登場するキャラクターの一人、のび太のおばあちゃんのビジュアルは原作をもとにしている。なんとも優しそうな表情が素敵なおばあちゃんは、「基本的にずっと目を閉じていて、なかなか瞳を見せてもらえない。ここぞというときだけパチッと開眼するんです」と八木監督。苦労したのは和服の表現と、顔のしわをどうするか。リアルにすればおばあちゃんらしくはなるが、リアルにしすぎると一人だけ作品の世界から浮いてしまう。デフォルメ加減のバランスに気を配り3DCG化している。

未来デパートのセールスマン・ナカメグロは、藤子・F・不二雄のSF短編集に登場する未来のカメラのセールスマン・ヨドバ氏がモデル。彼を登場させたのは山崎監督のアイデアだが、名前もそのままだとまずいと思い”ナカメグロ”に変更したという。八木監督曰く「手塚治虫先生のスターシステム(※同じ絵柄のキャラクターを複数の作品に登場させること)のような感じで、大好きなヨドバ氏を登場させました。目が白いのにナカメグロなんです(笑)」

もう一人、ラーメン屋の店員として登場するのが、「キテレツ大百科」の登場人物・苅野勉三。のび太が暴走させてしまうバイクの持ち主でワンカットしか登場しないが、キャラクター開発にはかなり時間がかかった。その理由は彼がかけている分厚いレンズの眼鏡。八木監督は言う。「漫画だとぐるぐるとうずまきのような線が書いてあるだけなんですが、度が強い牛乳瓶の底みたいな眼鏡をリアルに考えたらどうなるんだろうと試行錯誤しました。大変でしたが、最終的にはうまくいきました」

プリンスメロンホテル

のび太としずかの結婚式場となるプリンスメロンホテル。映画オリジナルデザインで、前作では外観のみ映し出されていた。八木監督は語る。「前作でできなかったことの一つが、プリンスメロンホテルの内部を描くことでした。本当なら、結婚式に遅刻したのび太が中に入って、受付のお姉さんに『お式は明日でございます』と言われたかったのですが、そこまで作りこめなかったので、できるだけ中を映さないようにして作っていたんです」

いよいよ今回、プリンスメロンホテルの内部の様子が明らかに。エントランスを抜けると吹き抜けとエスカレーターがあり、それを上がったところにある中二階のようなスペースからエレベーターに乗って上へ。屋上に開閉式のドームで覆われた教会と披露宴会場がある作り。雨が降る中スタートしたのび太としずかの結婚式は、大人のび太がスピーチを始める頃にちょうど雨があがり、ドームが開いて本物の空が見えてくる。このホテルの構造は八木監督が考え、前作同様アートディレクターを務める花房真がデザインを手掛けた。

しずかのウエディングドレスは、“着てみたい”とか、憧れてもらえるようなものを目指してデザイン。しずかがお父さんとバージンロードを歩いているときに舞う花びらはホログラムでできていて、ケーキはフード3Dプリンターが用意してくれる。山崎監督は言う。「この作品に合う未来感の表現は難しかったですね。車が少し浮いていたり、フード3Dプリンターみたいなものはあるけど、どこでもドアみたいなスーパーテクノロジーはまだないっていう世界ですから」。八木監督は「ひみつ道具と現代の僕たちの生活にあるものの間にあるテクノロジーにしたかったので、もうそろそろできてもいいんじゃないか、なおかつ、あったらいいなと思うものを盛り込みました。たとえば、ホテルの入り口でのび太を探しているジャイアン、スネ夫などが使っているエアーパラソル。空間に浮かんでいる傘なんですが、両手が使えるのがいいなと。現実にももうそろそろできてもいいんじゃないかと思っているんです」

ホテル内部は、美しく広がりのあるビジュアルが印象的。「たくさんのお客さん、披露宴会場や結婚式場を全部3DCGで描かないといけないのは、やっぱり大変だったんですが、やってよかったなと。特にエントランスの吹き抜け空間のモブシーン(人がたくさんいるシーン)は前回だとできなかったのですが、これまでの経験が生きています。今回だからできたシーンです」と八木監督は解説する。

ひみつ道具のデザイン

前作で、ひみつ道具は「かっこよくて高級感のあるものにしたい。原作のテイストを残しつつ、おしゃれな雰囲気などを足してもらい、大人が見てもかっこいいと思える道具になりました」と語っていた八木監督。質感や色にこだわりデザインにかなりの時間をかけたタイムマシンのほか、どこでもドア、タイムテレビ、タイムふろしきなどが今回再登場。さらに、ガリバートンネルや刷りこみたまご、アンキパン、正直電波なども映っている。

今回新たに登場するひみつ道具も前作同様、原作のテイストを生かしつつ、要素をプラスして3DCG化されている。たとえば入れかえロープ。入れ替わる瞬間に光らせるような演出であれば、もっと簡単だったはずだが、ひもをより合わせたロープの一本一本を通って小さい魂が入れかわる作りになっているのは、映画オリジナル。「脚本に『入れかわろうとしないでしょ』というセリフがあったので、入れかわろうとしない様子が見えたほうがいいなと。ねじられてらせん状になっているロープを小さい魂が通って少しずつ交互に入れかわっていくという形に表現しました」と八木監督は言う。

プレスコアリング

山崎監督や八木監督が3DCGアニメーション作品を手掛ける際は、声優の演技を先に録って、その声に合わせてアニメーションをつけるという手法を取っている。仕上げの際に追加のアフレコも行うが、今回もまずは2019年4月下旬にプレスコを行った。

ドラえもん、のび太(小学生)、しずか・ジャイアン・スネ夫(小学生&大人)は、前作同様、水田わさび、大原めぐみをはじめとするアニメの声優陣が演じている。のび太、しずか、ジャイアン、スネ夫の3歳の子供時代については、当初は子役を起用する予定でオーディションも行った。だが、小学生時代の面影そのままに幼くなった印象のしずか、ジャイアン、スネ夫は、かかずゆみ、木村昴、関智一の声の方がしっくりくるという事で、3歳児の演技もしてもらうことに。眼鏡がなく、小学生のころと比べて雰囲気が変わっているのび太だけは、子役が演じている。

大人のび太の声を演じるのは、前作同様、妻夫木聡。前回の10倍以上あるセリフ量で、繊細な演技も求められたが、両監督も絶賛の演技を披露している。八木監督は、「プレスコの時に、妻夫木さんから、『少しゆっくりめにしゃべって、のんびりとした雰囲気を出したい』と提案があり、情けなくも愛嬌のある、どこか健気な『大人のび太』になりました。前作以上にうまくはまってくれた気がします」山崎監督は、「一見フニャフニャしつつ、しずかちゃんの結婚相手としての“そこはかとない魅力”を良い塩梅に出してくれたと思います。別にお芝居を変えているわけではないのに、あのダメダメな大人のび太がかっこよく見えてくる瞬間もある。あの絶妙な感じはほかの人にはなかなか出せない。妻夫木さんにしかできない特殊能力だと思います」

のび太のおばあちゃん役は、宮本信子。いくつもの伊丹十三監督作品でVFXを担当していた山崎監督にとって、念願のタッグとなった。「なかなかタイミングが合わなくて、ようやくご一緒することができました。伊丹組の現場でいつもニコニコと挨拶してくれた宮本さんとまた作品の現場でお目にかかることができたのは望外の喜びでした。普段ははつらつとされている方なのですが、最初からのび太のおばあちゃんの雰囲気を的確につかんでくださって。お芝居は当たり前のように素晴らしく、のび太のおばあちゃんの柔らかさやその後ろにある芯の強さみたいなものまで表現してくださって、逆に僕らが、あぁおばあちゃんはこういう人なんだと教えてもらったような気がします」。八木監督も、「おばあちゃんを最大級のやさしさで表現していただきました。おばあちゃんには、どんなときでもニコニコとして、ちょっとやそっとでは動じない強さと、命の儚さがあります。宮本さんは収録時に、朗らかで深いあたたかさを、そしてあと数年したら亡くなってしまう儚さまでも声に籠めてくれました。本当に見事な『おばあちゃん』でした。素晴らしかったです」

ナカメグロ役は“ドラえもんが大好きな方で、なおかつまじめな印象があった”と、八木監督の推薦でバカリズムに決定。「最初は戸惑っていらっしゃいましたが、すごく勘のいい方で、やり方を掴んでからは早かったです」と八木監督。そして入れかえロープの声は、羽鳥慎一。初めはアナウンサーさながら落ち着いた口調で事実を報告しているが、やがて人間味が出てくるキャラクターを好演している。

アニメーション作業

各キャラクターの動きは、前作同様、アニメーターが一つ一つ手作業でアニメーションをつけている。八木監督がそれぞれのシーンでキャラクターの表情や動きなどを演出し、何度もアニメーターとやり取りし、ブラッシュアップしていった。

野比家の外観、玄関、階段、居間、のび太の部屋などは、前作で制作した6分の1サイズのミニチュアを背景に使用している。のび太の部屋はプラモデルの箱や本棚の本も作られており、制作期間半年以上。家の外観、玄関などすべてのミニチュアを合わせると製作期間1年強となる渾身のミニチュアを、今回の作品に合わせたカメラワークで新たに撮影した。ミニチュアを使うメリットとしては、手作りならではの温かみがあること。ミニチュアが実在するため画にリアル感がプラスされること。精巧に作られたミニチュアにCGキャラクターを違和感なく合成させるため、映像のクオリティが上がることなどが挙げられる。

また、3DCGアニメ『ドラえもん』の見どころの一つが、アトラクション的に楽しめるシーン。前作では、タケコプターで夜の街を空中散歩したり、未来で大人のび太を追いかけたり、のび太やドラえもんとともに空を飛ぶ感覚を体感できるシーンがあった。今回もスモールライトで小さくなったドラえもんがタケコプターでのび太を追いかけるシーンや、タケコプターで飛んでいる最中にのび太が意識を失いそうになるシーン、のび太がバイクで爆走するシーンなどが、3DCGならではの迫力でスピード感たっぷりに描かれる。

八木監督曰く「オートバイのシーンは、町並みを作るのにかなり労力がいりましたが、3DCGアニメーションで表現すれば必ず楽しいシーンになると思ったので絶対やりたかったんです。疾走感を大事にしました」。タケコプターのシーンについては、「前作では夜でしたが、今回は昼間がメイン。サスペンス感をもたせつつ、すごく高いところにのぼるとこんな感じなんだっていう雰囲気を出しました。意識を失いかけてのび太が落ちていくところは、絵コンテではもう少し短かったんですが、CGを制作する過程でさらに膨らませたところです」

主題歌

主題歌「虹」を歌うのは、歌手としても目覚ましい活躍を続ける菅田将暉。作詞・作曲は菅田と親交があり、「さよならエレジー」(18)の提供をはじめ何度もコラボレーションしてきたシンガーソングライター、石崎ひゅーいが担当。日常を切り取ったあたかかみのある歌詞と菅田のまっすぐな歌声が印象的な楽曲に仕上がっている。

山崎監督は、「グッときましたね。何気ない日常にある幸せを描写した歌詞が良いし、心の奥深いところに届く歌だと思います」。八木監督も同意する。「漫画『ドラえもん』は日常に不思議なものがある面白さ、ちょっとシュールな世界を描いていて、僕らはそれを3DCGアニメーションで立体感のある形で作っているんですが、『虹』の歌詞はその日常を祝福してくれているというか、日常ってやっぱり大切だよねっていうことを伝えてくれている。普通の日常がなくなってきている今だから、より響くと思います」

ドラえもん50周年

日常的に身近にあって、日本人にとって空気のような存在ともいえるドラえもんは、2020年にコミック連載開始から50周年を迎えた。これほど長く愛され続ける作品はそう多くない。「『ドラえもん』には、ワクワクが詰まってるんですよね」と山崎監督。「ひみつ道具は、すごい発明品ばかりですが、大人が悪用するんじゃなく、日常の中で使われて良いことが起こったり、大失敗したりする。子供のときのワクワクする感覚がそこにあるから、普遍的なんだと思います」。八木監督が続ける。「あと、のび太はダメダメな人間ですが、ひらめきとか素直さもありますし、あらゆる人間らしさが詰まったキャラクターなんですよね。藤子・F・不二雄先生がドラえもんはもちろん、誰もが共感する部分のあるのび太というキャラクターを生み出されたことがすごいと思います」

『STAND BY ME ドラえもん 2』は、ドラえもん50周年記念作品となっている。山崎監督は言う。「キャラクターたちの営みの奥に自分や自分の家族が見えたとき、人は感動すると思うんですが、もともと『ドラえもん』という作品にはそういう力がある。のび太は多くの人が自分のことのように感じる力のあるキャラクターですし、さらに今回の作品は、僕自身、自分の親やおばあちゃんのことを考えながら作っていたところがあるので、いろんな人が自分のことに置き換えられると思うんです。自分の親や家族のことを思ってもらえればいいなと」

「今回は、現在・過去・未来、いろんな時代の『1日』を描いている話です」と八木監督。「その『1日』は、生まれた日、誕生日、結婚式……ちょっと特別なイベントのある日です。おばあちゃんとの話は日常に近いかもしれないですが、何気ない普通の『1日』も、後から思い起こせば大切だったと気づくことがあります。ご覧になった方が、自分のときはこうだったなって、人生の節目を思い出してもらえればうれしいです。ドラえもんを知っているすべての世代に共感してもらえる、そんな『1日』たちを『STAND BY ME ドラえもん 2』では描いています。ぜひ、少し不思議な『1日』体験をしてみてください」

ゲスト声優

妻夫木聡(大人のび太) 1980年12月13日生まれ。福岡県出身。

【主な出演映画】
『悪人』(10) 、『怒り』(16) 、『泣き虫しょったんの奇跡』(18) 、『来る』(18) 、『パラダイス・ネクスト』(19) 、『決算! 忠臣蔵』(19) 、『Red』(20) 、『一度死んでみた』(20) 、『一度も撃ってません』(20) 、『浅田家!』(20)

【コメント】
再び大人のび太くんの声を演じさせて頂くことになりました、妻夫木聡です。
のび太くんとはCMでの撮影でご一緒してから、勝手に縁を感じさせて頂いています。
ドラえもんは僕たち日本人にとって切っても切り離せない国民的な漫画です。
その中でのび太くんを演じさせて頂けることをいつも誇りに思います。
のび太くんは大人になってもどこか頼りなくて、おっちょこちょいで、危なっかしい男ですが、そんなのび太くんの根底には深い優しさがあります。それはまさしくおばあちゃんから頂いた優しさなんじゃないかと思っています。
今回はそのおばあちゃんとの有名なエピソードが登場します。
「おばあちゃんのおもいで」はドラえもんの中でも最も好きなお話です。
未来から来たのび太を疑わずに、深い優しさで受け止めたくれたおばあちゃんに涙したのをよく憶えています。
そのエピソードを交えつつ、今回の『STAND BY ME ドラえもん 2』も涙なしには観られません。
おばあちゃんののび太を信じる無償の愛に、そして、のび太の諦めない心と思いやりの心に涙しました。
その希望に満ち溢れた涙を体感しに是非、劇場にお越し下さい。

宮本信子(おばあちゃん) 1945年3月27日生まれ。北海道出身。

【主な出演映画】
『お葬式』(84) 、『タンポポ』(85) 、『マルサの女』(87) 、『あ・うん』(89) 、『ミンボーの女』(92) 、『スーパーの女』(96) 、『マルタイの女』(97) 、『眉山』(07) 、『阪急電車 片道15分の奇跡』(11) 、『かぐや姫の物語』(13) 、『いちごの唄』(19) 、『キネマの神様』(21)

【コメント】
あの“のび太”のおばあちゃん役なんて、とても楽しそう!と、ワクワクしました。それに昔、伊丹組の映画『大病人』の現場で、山崎さんが走り回っている姿をよく拝見していたんです。そのあと素晴らしい映画監督になられて、いつかお会い出来るのを楽しみにしていたので、今回お話しを頂いたときは嬉しかったですね。原作の「おばあちゃんのおもいで」を拝読しまして、お年寄りにはお年寄りの役目があるというか、歳を重ねたからこそ分かる想い、というのを感じました。「おばあちゃんは、ここで待ってるから」という台詞があるのですが、私が一番好きな台詞です。
ドラえもんは今年で50周年。作り手がどんどん変わりながらずっと続き、皆から長く愛されるのは、本当に素敵なことだと思います。私も最近、50年ぶりに再会した監督やスタッフの方々がいて、50年ずっと健康で仕事を続けていくって本当に凄いことだよって周りから言ってもらったんです。この先も、お互いにずっと続けていけたら良いですよね(笑)。『ドラえもん』を観ている子どもたちが、笑ったり、感動したりする声を、早く劇場で聞きたい!皆さんとお会いできるのを楽しみにしています!

バカリズム(ナカメグロ) 1975年11月28日生まれ。福岡県出身。

【プロフィール】
1995年『バカリズム』を結成。
2005年12月よりピン芸人として活動。
現在、TVレギュラー番組を中心に活動するかたわら、定期的に単独ライブを行っており、発売と同時に即完売となる人気を誇る。
他にもナレーションや役者、脚本、イラスト、書籍など多方面で活動中。

【コメント】
今回『STAND BY ME ドラえもん 2』のオファーが来て、「やっと自分にも来た!」と思いました。ずっとドラえもん好きをアピールしていたのに、自分の周りの芸人たちにオファーが来ているのに自分には来なくて軽く拗ねてました(笑)。今まで、声優として作品に携わったのが1度だけで、ナレーションの経験はあったんですけど、こんなにも長いのは初めてです。しかも、グラフィックのクオリティが凄く高くて、キャラクターにセリフを合わせるのに苦労しました。でも演じるにあたり何かしらトラブルに見舞われていていつも慌てているキャラクターのナカメグロに憑依して作りこんだので、何も知らずに見たら僕だと気づかないかもしれないです(笑)それぐらい作りこみました!!今回の作品では「のび太の結婚式」がテーマになっていますが、僕にとって結婚は人生の中の第何章とかの区切りという感じなので、のび太としずかちゃんも「結婚編に突入か」という感じです。これから何章も増えていったらいいなと思います。他にも、ファンならおなじみのエピソードもあって、楽しめる作品となっています。

羽鳥慎一(入れかえロープ) 1971年3月24日生まれ。埼玉県出身。

【プロフィール】
1994年 日本テレビへ入社。
「ズームイン!!SUPER」や、人気バラエティ番組の司会、プロ野球中継の実況などを務め2011年3月末に退社。
2011年4月よりフリーアナウンサーとなる。

【コメント】
ドラえもんは、昔から凄く近くにいる存在です。子どものころは買うことが出来なかった漫画を、大人になった今、単行本全巻大人買いしました!(笑)何日間かで全部読みました!前作『STAND BY ME ドラえもん』で、「のび太の結婚前夜」は好きな話で、凄く感動して普通に泣きました。特にしずかちゃんのお父さんのセリフなんですが、思い出すだけで泣きそうなくらいです(笑)。なので『STAND BY ME ドラえもん 2』では声優のオファーが来たので、嬉しかったです。しかも、「入れかえロープ」というひみつ道具の役なんて一生に一度なので、本当に嬉しかったです。普段のアナウンサーのお仕事と声優としてのお仕事は、全くの畑違いで、自分の考えは全くなくして、機械的にやろうと思いました。そしたら監督に「良いロープ声で素晴らしいロープっぷりでした!」と言っていただいたんですが、これは素直に喜んでも良いのかな?(笑)きっと褒めていただいたのかなと思います(笑)『STAND BY ME ドラえもん』でも泣きましたが今回は大変です、ハンカチビショビショです。『のび泣き』です。のび太のエピソードはもちろん良いエピソードのオールスター勢ぞろいみたいなお話ですので、全編でのびのび泣いてほしいです。

主題歌

菅田将暉 1993年2月21日生まれ。大阪府出身。

2017年から音楽活動を開始し、シングル「見たこともない景色」でデビュー後、「さよならエレジー」はLINE MUSICで2018年年間ランキング1位を獲得。2019年5月リリースの「まちがいさがし」は各所配信ストアにて1位を席巻し、オリコン週間デジタルシングルランキングで自身初の3週連続1位を獲得。音楽アーティストとしても大きな注目を集めている。

【コメント】
物心ついた頃から当たり前のようにそこに居て、当たり前のように見てきたドラえもん。いっぱい笑っていっぱい泣いていっぱい勇気をもらったドラえもん。まさか自分がその一部を彩ることになるとは。とてつもなく高揚しております。沢山のありがとうを込めて、誠心誠意歌わせていただきます。

【楽曲情報】
菅田将暉「虹」(Sony Music Labels Inc.)
作詞・作曲:石崎ひゅーい
編曲:トオミヨウ

2020年11月25日(水)リリース

◆初回生産限定盤
仕様:CD+DVD/価格:¥1,700+税/品番:ESCL 5467~8

◆通常盤
仕様:CDのみ/価格:¥1,100+税/品番:ESCL 5469

作品概要

タイトル
STANDスタンド BYバイ MEミー ドラえもん 2』

原作
藤子・F・不二雄

監督
八木竜一

脚本・共同監督
山崎 貴

音楽
佐藤直紀

主題歌
菅田将暉「虹」(Sony Music Labels Inc.)

キャスト
水田わさび 大原めぐみ 
かかず ゆみ 木村 昴 関 智一
宮本信子 妻夫木聡

エグゼクティブプロデューサー
伊藤善章 梅澤道彦 阿部秀司

プロデューサー
赤津一彦 守屋圭一郎 渋谷紀世子 高橋麗奈

アソシエイトプロデューサー
森 文彦 天野 賢 松井 聡 勝山健晴 八木征志 後藤正太郎 田中聡敏

アートディレクター
花房 真

CGスーパーバイザー
鈴木健之

音楽監督/サウンドデザイナー
百瀬慶一

製作
シンエイ動画、藤子プロ、小学館、テレビ朝日、ADKエモーションズ、小学館集英社プロダクション、東宝、電通、阿部秀司事務所、白組、ROBOT、朝日放送テレビ、名古屋テレビ、北海道テレビ、九州朝日放送、広島ホームテレビ、静岡朝日テレビ、東日本放送、新潟テレビ21

制作協力
藤子プロ、阿部秀司事務所

制作プロダクション
白組、ROBOT、シンエイ動画

配給
東宝

公開
2020年11月20日(金)

上映時間
1時間36分

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ビスタビジョン

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